AIは生きている! ただし人間の手助けがあれば

“It’s alive! It’s alive!”

これは1931年に公開された映画「フランケンシュタイン」に出てくるセリフです。この映画を見たことがない人にとっても、ヴィクター・フランケンシュタイン博士がつくり出した「怪物」の話はなじみが深いでしょう。かの有名なキャラクターがついに目を開け、ヴィクターが手術台の前でふらつきながら「生きてる!生きてるぞ!」と興奮し叫び声をあげている場面を想像するかもしれません。

しかし、この作品は楽しませてくれる一方で、私たちに間違った記憶を植え付けてしまったという欠陥があります。実は、1818年に出版されたメアリー・シェリーの同名の古典小説では、このキャラクターが最初に動きだしたときにヴィクターは興奮して叫ぶのではなく、逃げて隠れたのです。

その通りです、人間であるヴィクターが人間ではないものをつくり出して力を与えたとき、最初に直面したものは「恐怖」という本能でした。この作品はフィクションですが、人工知能(AI)の概念に触れた最初の作品ではないしょうか。1818年というのは必ずしも技術面において豊かな時代であったとはいえません。しかし、私たちは造船の特許が最高の技術であった時代から、今日の生活とビジネスを支える技術力を獲得するまでの間、着実に長い道のりを歩んできました。

では、なぜ私たちの多くはAIのこととなるとヴィクターのように恐怖心を抱くのでしょうか。特に、現在のほとんどのAI技術は、その真摯な取り組みにより、プロセス、結果、経験をより良くするために設計されており、言うまでもなく、より高いセキュリティと制御を確保するために設計されています。私たちは常に、AIが人間に取って代わるかどうかを問うような悲観的な記事の見出しや、導入費用の増加を指摘する記事を目にします。Wikipediaには「AIによる人間支配」をテーマにしたページがあるほどです。

しかし実際には、現在では企業やビジネスにおいて、AIと機械学習の技術を何らかの形で導入していないほうがもはや普通ではないという状態です。あまりにも当たり前になっているため、私たちの多くはその存在に気づいていません。スマートアシスタントから、効率化が求められる医療業界の発展まで、AIはあらゆるところで活躍しており、セキュリティ業界も同様にその恩恵を受けています。

人と機械の連携

マカフィーはAIは何かの代替になるものではなく、強化するためのものと考えます。AIは体験を向上させ、効率性を高め、複雑な問題を解決することができると考えると同時に、現実的な立場をとっています。私たちは現在、人間だけでは企業が直面している膨大な数の脅威に対処することは不可能であると理解しています。しかし同時に、機械やテクノロジーには、人間が持つような創造性、ウィット、英知がないことも理解しています。

これは、サイバーセキュリティ業界において重要な要素です。このような現実的な立場と、AIが強化に役立つものであるという考え方は、AIそのもののコンセプトや成り立ちと一致しています。

現在、私たちが目にするAIの多くは、強いAI(Strong AI)もしくはAGI(Artificial General Intelligence、人工的な一般知能)と、弱いAI(Weak AI)に分類されます。弱いAIは、テクノロジーのプログラミングに人間が何らかの形で関わっていることを意味しますが、強いAIは人間の手を介さずテクノロジーがアルゴリズムを用いて処理、情報提供、意思決定を行うことができます。一方で、あまり語られることのない人工超知能(ASI)においては、テクノロジーが人間に匹敵する、あるいはそれを超えることができる高度な認知能力を獲得します。

ASIは多くの産業にとって理想であり、まだそこには遠く及びません。現時点ではほとんどのAIがまだ強いAIの段階であり、人間が処理と定義をすることが必要で、現在のテクノロジーにとって不可能なこと-つまり「感情」-の強化段階にいます。現在、機械では人間に代わって、脅威アクターであるかという判断を行うことができません。つまり、人間の経験、直感、動機、脳力でしか思いつかないようなシナリオを想像することができません。

そのため、人間と機械がチームとして協働する必要があります。機械は、現れる数々の脅威に対応し、セキュリティオペレーションセンターのアナリストが膨大な量のデータを管理して実用的なインテリジェンスに変換することを支援できます。しかし、機械は文脈を読み洞察力と認知力に基づいて脅威に対して優先順位をつけることができず、人間の技能が必要です。

攻撃者がAIを用いてAI搭載のソリューションに侵入する敵対的なAIが増加しているということを、念頭に置くことが重要です。このような脅威の増加によって、対応のスピードが非常に重要となってきています。つまり、組織が受ける潜在的な損害を減らすために人間が練った戦略と組み合わせることで、AIこそがサイバーセキュリティ業界全体においても最も大きな効果をもたらすと考えます。


恐れるなかれ知識が道となる

私たちはまだまだAIに対して恐れを感じている状況ですが、最近のAIの欠点と利点について知っておく責任があります。

AIの真の姿はインテリジェンスにあり、私たちは広い視野を持って受け入れることが非常に重要です。私たちは常に知識を得て成長することが可能です。この点においては、人間も機械も同じです。教育、学習、知識に基づき何かを生み出し創造するという面では、人間も機械も同じく無限の可能性を秘めています。

※本ページの内容は2021年4月12日(US時間)更新の以下のMcAfee Blogの内容です。
原文:AI Is Alive! But Not Without Our Help
著者:Arnie Lopez