Androidをターゲットにしたマルウェアの作成は、犯罪者にとって実入りの良い商売になる可能性を持っています。SMSを送信するトロイの木馬やボットネットクライアントなど、マルウェアの作成さえ終えてしまえば、あとはのんびり待っていれば自動的にお金を回収することができます。しかしその一方で、あっという間に摘発され、一瞬でビジネスが終了してしまうこともあります。最近、Android/OneClickFraud(ユーザーを恐喝するマルウェア)およびAndroid/DougaLeaker(ユーザーのデータを盗んで攻撃者に送信するマルウェア)の犯人グループが、マルウェア対策と個人情報保護を目的とした日本の法律によって逮捕されました。
お金を払ったのに、アプリが動かない?
Android/OneClickFraudは、アダルトエンターテイメントアプリを装ったマルウェアです。アダルトコンテンツが見られると期待したユーザーが、このアプリをダウンロードすると、支払いを要求するメッセージが表示されます。5分ごとに「まだ支払いが済んでいない」というポップアップが表示されます。
「支払いが済んでいない」というメッセージを表示するAndroid/OneClickFraud
こんな詐欺に引っかかる人はまずいないだろうと誰もが思うことでしょう。とくに自分が支払い済ませた後であれば、なおさらのことです。しかし、実際には200人以上の被害者が、犯人グループに2,100万円(約26万5,000米ドル)という多額の金を支払っていたことが判明しています。これは、少人数の犯人グループにとっては、悪くない額です。しかし、日本の警察はついに犯人グループを特定し、マルウェアの開発者を含む6人を逮捕しました。
映画を見に行こう
マカフィーでは、以前にもAndroid/DougaLeakerに関するブログを出しています。このマルウェアは、「the Movie」というタイトルが付けられ、ビデオゲームやアダルト映画の予告編の視聴機能を謳ったものでした。これは、攻撃者たちによる非常に巧妙なソーシャルエンジニアリング戦術でした。予告編を見たいと思った被害者は、結局は連絡先情報を盗まれ、その情報は攻撃者のサーバーに送信されてしまいました。
人気ゲームやアダルト映画の予告編の提供を装うAndroid/DougaLeaker
このマルウェアは、連絡先情報を収集して、それを出会い系サイトの勧誘に利用することを目的としていたようです。バイラルマーケティングや、ユーザーに対してあなたのサイトを宣伝する電子メールを自主的に友人に送信してもらうように依頼するのは容認されており、違法ではありませんが、トロイの木馬を使用して連絡先リストを収集すると、法に触れ、刑罰の対象となります。
出会い系サイト運営会社の責任者がマルウェアの開発を外注していたというのは、興味深い事実です。合法的なモバイル開発の場合と同じように、自前でモバイル開発のスキルを持たない犯罪者も、やはり第三者に作成を依頼する例が増えています。これはサードパーティのモバイル開発業者にとってはビジネスの獲得になりますが、マルウェアを開発した業者も、委託した業者と同様の罰を受けることを知っておく必要があります。
明るいきざし
日本の警察が、モバイルマルウェアの犯人グループを追跡していると知って頼もしく思います。こうしたモバイル脅威の背後にいる犯罪者たちを特定して告訴する、警察の仕事ぶりは賞賛に値します。しかしこういったモバイルマルウェアが絶滅する日が来ることはなさそうです。いまだに大多数の新規マルウェアが、規制のないサードパーティのアプリマーケットやマルウェアのドライブ・バイ・ダウンロードを提供しているサーバーを経由して発生しています。犯罪者が、モバイルボットネットやユーザーに無断でアプリを購入できるマルウェアによって利益を手にしているうちは、この種の攻撃が下火になるまで、まだしばらく時間がかかるかもしれません。
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※本ページの内容はMcAfee Blogの抄訳です。
原文:Mobile Crime Doesn’t Pay–in Japan