2017年4月3日(米国時間)、マカフィーはインテルから分社化し、「新生マカフィー」としてスタートを切りました。グローバルで約7,700人のエキスパートを抱えるセキュリティ専業会社として、どのような方向を目指すのかーー2017年4月21日に開催された事業戦略説明会において、代表取締役社長の山野修が説明を行いました。
単なる技術の提供にとどまらず、社会を守ることを目指す新生マカフィー
マカフィーはこれまで、個人のお客様向けには「人々と家族のデジタルライフを保護する」こと、また法人のお客様向けには「ナンバーワンセキュリティパートナーになる」ことを目指し、さまざまな取り組みを進めてきました。
特に法人向けでは、脅威を防御するだけでなく、検知し、復旧していくという「脅威対策ライフサイクル」というコンセプトを掲げ、パートナーとともにトータルな対策を提供しています。また、業界全体として脅威インテリジェンスを共有し、効果的な対策につなげるため「OpenDXL」という共通フレームワークを発表し、さまざまなセキュリティ製品やアプリとの統合を進めてきました。さらに、昨今急成長を見せる組み込み機器向けにOEM形式でセキュリティソリューションを提供し、ATMやPOS端末、工作機械など、社会を支えるさまざまな機器を保護しています。
新生マカフィーは、こうした主な取り組みを引き継ぎつつ、「決意を新たに事業展開していきます」と山野は宣言しました。
「マカフィーは、サイバー上の脅威からコンピュータだけでなくインターネットに接続されたあらゆるものを守り続けることに専念します。単にセキュリティベンダーとして製品や技術を提供するだけでなく、私たちの家族を、社会を、国を守るために働いていきます」(山野)
もちろん、マカフィー1社だけですべてを保護できるわけではありません。かねてから掲げてきた「Together is Power」というコンセプトが示す通り、「さまざまなセキュリティベンダーやIT企業、顧客と手を取り合い、協力し、力を合わせてサイバーセキュリティを守っていきます」と山野は述べました。
「人材不足の解決」「働き方改革の支援」「新分野への展開」という3つの柱
山野はこうした方針を説明した上で、2017年に特に注力していく分野を挙げました。それが「セキュリティ人材不足の解決支援」「働き方改革を支えるセキュリティの実現」「OTなど新たな分野への展開」の3つです。
既にさまざまな調査でも指摘されているとおり、サイバーセキュリティはさまざまな課題を抱えています。中でも深刻な問題が「セキュリティ人材不足」です。脅威は複雑化、巧妙化の度合いを高める一方ですが、それに対処するセキュリティ人材は、経済産業省の調査によると2020年までに世界で200万人、日本でも約19万人不足すると指摘されています。「いろいろな企業のトップとお話しする機会があるが、そこではとにかく『セキュリティ人材がいない』『今から育てる余裕もない、何とかしてほしい』と言われます」(山野)
そこでマカフィーでは、製品の導入・インテグレーション支援だけでなく、SOC/CSIRTの立ち上げや体制作りも含めたコンサルティングサービスを提供し、人材不足に悩む企業を支援します。ニーズに応じて、セキュリティの運用そのものを任せてもらうマネージドサービスを、テレコム企業やISPと連携して展開することも検討しています。同時に、製品面では自動化やオーケストレーションを可能にし、少ない手間で最新の脅威に高速に対応できる仕組みを整えていきます。
2つめの「働き方改革を支えるセキュリティの実現」について、山野は「テレワークや在宅勤務の有用性は10~15年前から言われながら、なかなか普及してきませんでした。IT技術や通信インフラは十分なレベルに達してきたのに、どの企業もなかなか踏み出せないでいます。セキュリティがその阻害要因になってきました」と説明し、このネックを解消するため、情報漏えい対策やデバイス制御、Webアクセス制御などの製品を提供し、働き方改革を支援していくと述べました。
3つめの「新しい分野への展開」で想定しているのは、Internet of Things(IoT)やOTといった分野のセキュリティです。電力やガスといった重要インフラにはじまり、スマートホームに至るまで、インターネットにつながるさまざまな機器を、「Mirai」に象徴される脅威から保護していきます。先に東京電力パワーグリッド様が、2020年までに世界最高のセキュリティレベルを目指し、複数の企業と協業することを発表していますが、マカフィーもこの取り組みに加わり、セキュリティ戦略策定から設計、コンサルティング、教育などを通じて次世代スマートグリッドのセキュリティ強化を支援していく予定です。「表には出てこないが、社会を支えるためのお手伝いをしていきます」(山野)
このようにマカフィーは分社化にともなって、セキュリティに注力する姿勢をいっそう明確にしました。そして、今回挙げた3つの分野に、マカフィーのみならずセキュリティ業界全体で取り組み、日本のさらなる安心・安全を目指していきます。