IoT時代だから、大切にしたい「位置情報」

 スマートフォン、スマートウオッチなどのデジタルデバイスが普及するなかで、地図アプリやフィットネスアプリ、SNSなど、GPS(位置情報サービス)と組み合わせたサービスの利用が一般的なものになっています。
 ネットや動画を閲覧するだけではなく、さまざまな機能を追加できるのがデジタルデバイスの楽しさです。走ったルートをマッピングして、SNSで共有し、同じ趣味の仲間とつながっていく。そんな楽しみが広がっていく、本当に魅力的なツールになっています。
 一方で位置情報の共有によってできることも広がりますが、もちろんリスクもあります。頻繁に居場所を公開していれば、自宅や現在地の特定につながったりと、知らない間に個人情報が広がってしまうかもしれません。今回はそんな事例と、今後の時代に気を付ける点を考えてみます。


1. 位置情報の履歴は、行動パターンそのもの

 スマートフォンやスマートウオッチの初期機能や、そのアプリとして、各社がヘルスケア機能に力を入れています。身に着けたデバイスで歩数を測ったり、走ったルートをマッピングしたりといったサービスを利用している方は多いのではないでしょうか。特に日本では少子高齢化といった社会背景もあって、今後もニーズが高まっていきそうです。
 しかしフィットネストラッキングは位置情報の取り扱いによっては、大きな問題を招く可能性が指摘されています。象徴的なトラブルの一つに、人気のフィットネストラッキングサービスが世界中のユーザーの活動状況のマップを公開した際、米軍などいくつかの国の軍事基地周辺の移動経路が浮かび上がった事例があります。マッピングされたのは、訓練のルートなのか、いずれにしても軍関係者の何らかの行動パターンを示していることになります。機密に触れる可能性もあることから英語圏を中心に話題を呼びました。
 似たような問題は、個人ユーザーや、別のサービスの利用者にも同じ問題が起こり得ます。私がランニングが趣味で、SNSで自宅周辺のトラッキングマップを共有したとしたら、個人情報が特定されるリスクがあるのはお分かりかと思います。


2. 位置情報はプライバシー

 位置情報の利用をめぐっては、過去にいくつものトラブルが起こってきました。多いのはSNSの投稿が「位置情報付き」を選択したままになっていたり、共有する画像に位置情報が付いていたりすることで、居場所を“全世界に”発信しているケースです。自宅の特定や、不在中の空き巣、ストーカー被害につながるなどさまざまなリスクが想定できます。
 またスマホの位置を追跡するといった“浮気調査アプリ”がSNSで炎上するなど、位置情報を取り扱うことそのものについても、何度か問題になってきました。
 昨年3月には、最高裁判所の判決で、車などにGPS発信器を取り付けて位置を把握する「GPS捜査」が、令状なしでは違法との判断が下されています。たとえ人の目がある中を車で移動しているとしても、位置情報そのものがプライバシーとみなされているのです。
 さらにサービス事業者のセキュリティがずさんであれば、マルウェア感染などによる蓄積情報の流出も考えられます。そしてSNSなどのサービスにおいては、サービス事業者による利用者データの不正共有も問題になっており、今年4月にはFacebookの利用者データ不正共有問題で、マーク・ザッカーバーグCEOが米議会の公聴会で謝罪しました。同様のトラブルが別の会社やサービスで発生しないよう、マカフィーでも注意喚起をしていきたいと考えています。


3. GPS利用のON/OFFにメリハリを

 デジタルデバイスの多様化が進むIoT時代には、位置情報をはじめさまざまな“行動履歴”がデジタルデータとして蓄積されていきます。便利な機能を安心して使うためにも、まずは「不要な機能はOFFにしておく」「位置情報を安易にアップロード・共有しない」ことを第一に考えてください。またマルウェアなどによる漏えいリスクを下げるために、セキュリティ製品の活用も併せておすすめまします。

著者:マカフィー株式会社 CMSB事業本部 コンシューママーケティング本部 執行役員 本部長 青木 大知

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<掲載内容>
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