現在、米国内で何らかの職に就いている女性と仕事を探している女性を合計した割合は 57% しかありません。これは1988年以来の最低の割合です。
このデータは、今回のパンデミックにおける厳しい状況を示す多くのデータの 1 つにすぎません。パンデミック下で雇用状況に影響があった何百万人のうち、女性が最も大きな影響を受けました。
米国労働統計局(BLS)によると、パンデミック開始から2021年1月までの間で、約230万人の女性が離職する一方、同じ期間中に離職した米国の男性は180万人でした。3月8日の国際女性デー(International Women’s Day)が目前の今、勤勉で有能な女性の労働力が置き去りにされているという大きな潮流を、どのようして食い止めることができるのか、考えたいと思います。
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パンデミックによって仕事を辞める人の割合は、男性よりも女性の方がはるかに高い
BLSの統計は、より広い範囲についても予測しています。パンデミックが始まって以来、米国だけを見ても合計4,637,000人の女性の職が失われました。企業の幹部、小売業、教育者、公共事業従事者や公務員など広範囲に及びます。失業した25〜44歳の女性の約3分の1は、育児のために仕事を辞めたとその理由を述べています。
このほかにも、世界的に見た場合、女性は少なくとも男性の2.5倍の家事と介護を無給で行っており、世界の男女賃金格差が23%であるという二点を考えあわせてみると、就業が可能な状況であっても、子どもの世話や自宅学習のために何百万人もの女性が働くことをあきらめたということが容易に理解できます。
しかしこれは驚くようなことではありません。例えば、パンデミックが始まる数年前の調査では、女性は家を守り、男性は外で仕事をする、という古い考え方をするアメリカ人はほとんどいませんでした。しかし、米国のピュー研究所によると、いざ家庭と仕事の両立が難しい状況になった場合、妥協して仕事をあきらめるのは女性のほうがはるかに多いという結果になっています。そして今、自ら家に入るという古い考え方に、それも多くの人がそうした考え方になっているのです。
わかりやすくいえば、今回のパンデミックの犠牲者は仕事をしている女性だということです。
パンデミックでリモートワークをする女性を支援する
この事実と数字を踏まえて、子どものことであれ、年老いた家族のことであれ、その両方であれ、家族のことに心を配りながらリモートワークで働いている女性に焦点を当てたいと思います。私たちは、経営者として、リーダーとして、同僚として、こうした女性をサポートするために何ができるでしょうか?
昨年6月に、女性の労働時間は男性と比較して4〜5倍の割合で短くなっているという記事がフォーブス誌に掲載されました。これは表面上、日々の家族のケア、子どもの学校、介護、仕事、すべて同じ家でおこる出来事を管理するためという理由になっています。しかし記事では、こうした理由で労働時間を短くした女性たちは、高い能力を必要としない仕事、解雇の危険性が高い仕事、昇進のチャンスが低い仕事に就く傾向があり、それによる波及的な影響が懸念されると指摘しています。実際、昨年夏に米国で実施されたある調査によれば、リモートワーク期間中の昇進について、自宅に子供がいる男性の34%が昇進したのに比べ、同じ条件で昇進した女性はわずか9%しかいませんでした。
この状況について、メリンダ・ゲイツ、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の共同議長は、BBCのインタビューで現在の状況に関する簡潔な意見として次のように述べました。「COVID-19によって強制的にもたらされたこの機会に、現在の役割分担がいかに持続不可能であるか、そして女性が家庭で担う重責によって彼女たちの能力と貢献度が制限されてしまうか、それによりどれだけ多くの損失が出ているか、すべての人が考える必要があると思います。この状況を変えるためには、政府や企業だけでなく、私たち一人ひとりが『公平さ』ということについて真剣に考える必要があるのではないでしょうか」。まさにそのとおりだと思います。これは私たちが協力して解決すべき問題です。
経営者やリーダーとしてできること
この問題を解決するために経営者やリーダーができることは何かと考えていたところ、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載されていた記事に目が留まりました。「家庭を持ちながら働く女性の雇用を維持するための3つの方法」というテーマで書かれたこの記事では、経営者として適切に女性をサポートする方法が紹介されています。著者は次の3つの方法を提案しています。
- 可能な限り、確実で明確な情報を伝える
- 仕事について角な成果を期待しない
- そして、常に共感を持って接する
私たち全員が直面しているストレス要因を考えれば、この3つの簡単な方法は奥が深く重要な示唆が含まれています。おそらく、以前よりもはるかに従業員について知り、関わっていく必要があります。特に、この記事を読んで結論が心に響きました。
「現在は、家庭と職場の境界線があいまいになっています。この状態が今後すぐに解消されるわけではないため、もはや企業は、従業員の家庭の事情についても考えなければならない時期にきています。」
実際チームメンバーと接する際には、毎日この状況を目にしています。この文章を読んで「なるほど」と感じた方も多いのではないでしょうか。毎日数時間、パソコンのカメラをオンにすればオフィスの外で同僚の生活を垣間見ることができます。午前7時の会議が家事の都合で午前8時からに変更されたり、子供が「こんにちは」と言うためにビデオ会議の画面に飛びこんできます。このように、それぞれの家庭でさまざまな事情を抱えているのです。
ここで、”確実で明確な情報を与える”、”仕事について過度な成果を期待しない”、”常に共感を持って接する”という3つの方法を改めて考えてみましょう。これですべてが解決するわけではありませんが、問題を解決するための出発点にはなるでしょう。経営者やリーダーは、xファクター(未知の要素)を最小限に抑え、作業負荷を適切に管理し、共感を持って社員と接することにより、雇用を維持しながら業績を回復させていくことができます。少なくともパンデミック下において、仕事やキャリアから女性を追いやってしまうストレス要因を軽減させることはできます。優秀な経営者やリーダーは、常にこうした取り組みを行ってきました。大変な状況である今こそ、こうした取り組みが、当たり前のことにしなければならないと強く思います。
友人や同僚としてできること
同僚という立場であれば、チームのメンバー、取引先、クライアントなど、周囲の人たちに声をかけ、どうしているかと尋ねてみれば良いのです。私はこれまでに多くのミーティングを開き、仕事以外のさまざまなことについて話し合ってきました。リモートワークで得た経験を共有することにより、現在の状況に適した新しい規範をつくり出す必要はありますが、たまに仕事以外で話す機会を設けることもそのひとつだと考えています。
こうしたミーティングの目的は、相手の話に耳を傾けるということです。誰かに聞いてもらうことで気持ちが軽くなったという経験があると思います。話し合いの場所を設けることができれば、何らかの形で相手をサポートすることができます。
女性が直面しているいくつかの課題は、私たちが直接支援することができない困難な課題もありますが、それでも、話を聞けば少なくともどういう課題に直面しているかを理解することはできます。あなたが、そしてあなたの知人が困難な状況にある時に助けてくれるリソースをいくつかご紹介します。(※米国内の情報)
女性のためのメンタルヘルスリソース
米国保健社会福祉省の一部である女性の健康に関するオフィスは、そのWebサイトで豊富なリソースを提供しているほか、さらにリソースを提供できるヘルプラインも提供しています。
国立精神衛生研究所には、対処に苦労している人や危機に瀕している人に即座に役立つ記事、リソース、およびサービスへのリンクの拡張リストがあります。
女性のための法的リソース
Better Balanceは、「法の力を利用して労働者の正義を推進し、経済安全保障を損なうことなく自分自身と愛する人の世話をすることができる」非営利の法的擁護団体です。彼らは人々に彼らの職場の権利についての情報を提供することができる秘密のヘルプラインを提供します。
全国女性司法センターは、COVID-19のために学校または保育所が閉鎖されている子供の世話をするために、有給の病気休暇および有給休暇へのアクセスに関する質問とともに、補完的な法律相談を提供しています。
協力して現在の状況を変える
世界中で多くの女性が離職し、組織は才能あふれる貴重な人材を失いました。私たちは女性がキャリアと生計を犠牲にするのを見てきました。実に多くの女性が、今回のパンデミックで苦境に立たされ犠牲を払ったのです。
このような社会的な課題は、私たちがみんなで力を合わせて解決する問題です。この先、大きな視点に立った解決策が出てくる可能性はありますが、女性を雇用している経営者として、あるいは女性と共に働く同僚として、今すぐにできることがあります。それは、手を差し伸べ、耳を傾け、具体的に行動するということです。特に家庭と仕事を両立させている勤勉な女性に対しては、これまで以上に共感を持って接する必要があります。
上述のデータやリソースについては米国の情報ですが、日本も同様のジェンダーギャップについて報道されています。困難な状況にある女性たちを支援するための考え方や方法は共通しています。3月8日の国際女性デー(International Women’s Day)を前に、共に考え行動していければと思います。
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※本ページの内容は2021年2月28日(US時間)更新の以下のMcAfee Blogの内容に、一部追記しています。
原文:Supporting the Women Hit Hardest by the Pandemic
著者:Judith Bitterli