個人も企業も考えてみたい、これからの「個人情報」と「プライバシー」

 企業が膨大なデータを集めサービスに活用しようとしている中で、昨年末に「PayPay」の不正利用のトラブルが発覚し、2019年は「リクナビDMPフォロー」「7pay」といった大手企業のサービスを筆頭にプライバシーや個人情報管理のあり方が問題となった1年でした。スマートフォン所有率が上がり、誰もが個人情報を詰め込んだ端末でインターネットにつながっている時代、今後も引き続き社会や企業の注目するテーマになるのは間違いないでしょう。

 実際のところ、プライバシーや個人情報について、消費者はどのような目で見ているのでしょうか。マカフィーはMMD研究所と共同で、個人情報とプライバシーに関するテーマの意識調査を行いました。その結果、ユーザーの抱いている不安や提供しても良いと思っている情報の種類といった興味深いデータを入り口に、新しい時代のデータとの付き合い方が見えてきました。


抵抗感が高いのは、動的情報=プライバシーの提供

 ネット上でやり取りする個人と紐付いたデータの中で、氏名や年齢、住所などは静的(スタティック)な情報といえます。またサイトの訪問履歴やインターネットの検索履歴、ECサイトの購入履歴など、消費者がネット上でどのような動きをしたかのデータは動的(アクティブ)な情報に区分できます。一般に静的情報=個人情報、動的情報=プライバシーと位置付けることができるのではないでしょうか。

 今回の調査では、個人情報提供に関して「多くの企業は必要以上に個人情報を収集していると思う」「企業が収集している個人情報をどのように管理しているか不安だ」という意見がそれぞれ7割を超えました。一方で、データの種類や企業の伝え方によって、渡して良いと思える情報と、そうではない情報があることがあることも見えてきました。
 その違いは「個人情報」のデータなのか、「プライバシーのデータ」なのかが判断基準になっているのではないか、というのが私たちの考えです。

 調査結果からは、消費者は個人情報よりも、動的情報、すなわちプライバシーの企業への提供をいやがることが分かりました。消費者に「ポイントや割引が受けられる」というメリットだけを示して情報提供を呼び掛けた場合、個人を特定できそうな「氏名」「電話番号」よりも、プライバシーである「インターネットのショッピング購入履歴」「ウェブ検索履歴・閲覧履歴」「位置情報」の方が、企業に渡したくない情報の上位になりました。「検索履歴」「位置情報」などスマートフォン内にある情報は、特に渡したくないという反応が寄せられています。


利用目的の明示が大きな違いに

 ところが、企業が「何に情報を活用するか」を示すケースでは、回答に変化がみられました。「地図アプリが精度向上のために位置情報を提供してほしい」とデータの活用方法を示した上で、動的情報である位置情報を提供できるかを質問したところ、位置情報を提供しても良いと答えた率は、目的を示さない時の7.5%から、過半数に大幅アップしたのです。

 同じく当初9割以上が提供に難色を示したウェブの検索履歴・閲覧履歴に関しても、「ニュースアプリ会社が社内でマーケティング戦略を立てるために」と明示して提供を求めた場合、45%は提供できると回答しています。

 データが何に使われるかや、位置情報の精度向上・最適な広告配信といったメリットが分かれば、ユーザーの不安は和らぐということが見て取れます。

 情報提供に対する消費者の意識を聞いた設問でも、「お得なサービスを受けるには企業にある程度情報を提供する必要がある」「個人情報を提供することによって便利なサービスがうみだされるのであれば提供する」と、過半数がポジティブな声を寄せました。


若い世代ほど意識が高い

 上記のような結果から、ユーザーは享受できるメリットを理解できれば、データの提供には必ずしも否定的ではないことが分かります。

 一方で、個人情報やプライバシー関連の問題が発覚したり、個人情報の取り扱いを軽んじていると見られているといった企業のサービス離れを感じさせるデータも出ています。企業側は「第三者にデータを提供しない」「個人を特定できない形の活用」「収集したデータの活用方法を示す」といったスタンスを明確に表現し、ユーザーの不安を取り除くことが大切になりそうです。

 ほかにも、10代男性を中心としたデジタルネイティブ世代ほど、メールアドレスの複数使い分け、URLの開始の確認、シークレットモードの利用、アプリショップや購入サイトでのレビュー数や評価の吟味、プライバシーポリシーの確認など、自分でできる対策を工夫しており、個人情報やプライバシーに関する意識が高いという結果も出ています。

 時代の潮流に合わせて、この傾向はいっそう強化されていくことが予想されます。企業も消費者に情報活用の内容を提示したりする重要性は高く、マカフィーはそういった動きを支えていきます。

*上記データ・グラフの調査は、2019年9月にマカフィー株式会社&MMD研究所が共同で実施。サンプルは日本在住の10代から60代以上の男女、1,500名が対象。

著者:マカフィー株式会社 CMSB事業本部 コンシューママーケティング本部 執行役員 本部長 青木 大知